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大手コンビニチェーンが10年ぶりに制服を刷新し、話題になりました。制服のデザイン——ここで言うデザインは意匠、つまり「見た目」のことです——が、なぜ経営の話題になるのか。ピンとこない方も多いかもしれません。制服はあくまで仕事のための衣服であり、動きやすさや丈夫さこそが本質ではないか。その感覚は決して的外れではありません。しかし私は、制服こそ「見た目」が重要だと考えています。それは単なる好みの問題ではなく、従業員の幸福度から業務の質、そしてブランド価値にまで連鎖していく、経営の問題だからです。

制服には、二つの機能がある

制服には二つの機能があります。一つは作業服としての機能性、もう一つは見た目という機能です。アパレルである以上、この二つを併せ持つのは当たり前のことで、世の中のすべての衣服が同じ構造を持っています。私たちが私服を選ぶときも、暖かさや動きやすさという機能性と、似合うかどうかという見た目を、無意識のうちに天秤にかけています。

一般的には、制服の場合は作業服としての機能性のほうが重要だと考えられがちです。仕事着なのだから当然だ、と。しかし、この優先順位は見直す価値があります。

以前、「プロダクトデザインを考える(上)」で、製品には「使う道具としての機能」と「そこにあるだけの置物としての機能」の二つがあり、後者が持ち主の幸福度を左右するという話を書きました。制服にも、まったく同じ構造があります。作業服としての機能性は「道具としての機能」に、見た目は「置物としての機能」に当たります。ただし制服の場合、この「見た目」の機能が働きかける相手は、持ち主本人だけではありません。ここに、制服という衣服の特殊性があります。

制服を着る人は、私服とは比較にならない視線を浴びている

制服を着用する業務は、基本的にコンビニの店員のように、消費者と直接接する業務です。このような業務では、消費者からの強く直接的な視線を浴び続けることになります。それは、私服で街を歩いているときに意識する他人の目とは、比較にならないほど強い視線です。

私服で外出しているとき、すれ違う人にとって私たちは「風景の一部」にすぎません。しかし接客の現場では、消費者は目的を持って、正面から、至近距離で従業員を見ます。レジ越しに、カウンター越しに、視線は明確にこちらへ向けられます。しかもそれが、勤務時間中ずっと、不特定多数から繰り返されるのです。

場面浴びる視線の質と量
私服で外出しているとき周囲にとっては「風景の一部」。視線は断続的で、意識する場面も限定的
制服を着て接客しているとき目的を持った消費者から、正面・至近距離で見られる。勤務時間中ずっと、不特定多数から繰り返し向けられる

もちろん、日頃から他人の目を一切気にしない人もいます。しかしそれは少数派です。ほとんどの人は、多かれ少なかれ他人の目を気にします。だからこそ、その視線を浴び続ける時間の「装い」を会社が用意しているという事実は、想像以上に重い意味を持ちます。私服であれば、人は自分の判断で装いを選べます。制服には、その自由がありません。選べない服を着てもらっている以上、その服が本人にとって誇れるものかどうかは、会社が引き受けるべき責任だと言えるでしょう。

見た目の良い制服が生む、三段階の連鎖

「かっこいい」「かわいい」と思える制服は、従業員の承認欲求を満たします。承認欲求が満たされれば幸福度が高まり、やる気が引き出されます。そして、消費者の視線を意識することで従業員の意識そのものが変わり、業務の質が上がり、顧客サービスが改善されていきます。さらに、その姿は店舗やブランドの印象として消費者の記憶に残ります。制服を着ることに誇りを持てる職場では、従業員満足度が上がり、モチベーションが高まり、結果としてブランド価値が高まる。制服には、それだけの効果があります。

この流れを整理すると、見た目の良い制服の効果は、従業員個人の内面から始まり、日々の業務を経て、企業のブランド価値にまで届く、一本の連鎖として捉えることができます。

段階起きること
第1段階:従業員個人の内面承認欲求が満たされ、幸福度が高まり、やる気が引き出される
第2段階:日々の業務・接客消費者の視線を意識することで意識が高まり、業務の質が向上し、顧客サービスが改善される
第3段階:企業・ブランド制服を着ることへの誇りが従業員満足度とモチベーションを支え、店舗やブランドの価値が高まる

ここで重要なのは、この連鎖の起点が、あくまで「従業員個人の内面」にあるという点です。動きやすく、丈夫で、洗濯にも強い。機能性だけを満たした制服は、確かに現場を支えます。しかしそれだけでは、この連鎖の最初のスイッチが入りません。制服の見た目という機能は、作業服としての機能と同等か、それ以上に重要です。

以前、「整理整頓は、モチベーション戦略です」で、オフィスを「職場の住環境」として捉える視点をお伝えしました。制服は、いわば最も身近な職場環境です。社員が一日の大半を過ごす空間が幸福度に影響するのであれば、一日中その身にまとっているものが影響しないはずがありません。しかも制服は、オフィスの改装のように大きな投資を必要とせず、更新のタイミングも定期的に訪れます。手をつけやすい職場環境そのものだと言えます。

では、どんな制服を選べばよいのか

答えはシンプルです。従業員目線で「かっこいい」「かわいい」と思えるもの。そして、消費者目線でも「かっこいい」「かわいい」と思えるもの。その両方を満たすものを選べばよいのです。

ここで身構える必要はありません。有名デザイナーを起用する必要はありませんし、特別な美的感性も必要ありません。一般的な人の目線、一般的な感性で「良い」と思えるものを選ぶことが、最も良い結果につながります。制服を着るのも、それを見るのも、特別な感性を持った人ではなく、ごく普通の感覚を持った人たちだからです。

むしろ注意すべきは、奇抜さや独自性を狙いすぎることです。個性的で目を引くデザインは、話題性という点では効果があるかもしれません。しかし、それを毎日着るのは従業員です。着る側が気恥ずかしさを覚えるような制服では、承認欲求を満たすどころか、逆の効果を生みかねません。多くの人が素直に「良い」と感じるデザインのほうが、幅広い従業員と消費者に対して効果を発揮します。

そして、これを実務に落とし込むうえで確実な方法があります。選定のプロセスに、従業員自身を巻き込むことです。複数の候補から投票してもらう、試着会を開いて実際に着た感想を聞く。「自分たちが選んだ制服だ」という感覚そのものが、着ることへの誇りをさらに強くします。経営者やデザイン担当者だけで決めてしまうと、実際に着用する従業員の「かっこいい」「かわいい」という感覚とのあいだにズレが生じるリスクがあります。連鎖の起点が従業員の内面にある以上、その内面に最も近い人たちの声を聞くことが、遠回りのようでいて最短の道です。

三本柱の視点で、制服を捉え直す

ET-OFFICEが掲げるデザイン戦略・ブランド戦略・人事労務戦略の三本柱の視点から、制服の見直しを整理します。

視点取り組みの方向性
デザイン戦略
機能性と見た目を、同じ優先度で設計する
動きやすさ・耐久性・手入れのしやすさといった機能性を確保したうえで、見た目を同等以上の優先度で検討する。素材や色の選定段階から、見た目の設計を組み込む
ブランド戦略
制服を通じてブランドの世界観を伝える
制服の色や形をブランドイメージと一致させることで、店舗や現場そのものをブランド体験の一部として機能させる。消費者が最も長く目にするブランド接点は、実は従業員の姿である
人事労務戦略
従業員の誇りと満足度を高める資産として扱う
制服を「支給品」ではなく、従業員の幸福度とエンゲージメントを支える職場環境として位置づける。選定プロセスに従業員の声を反映させ、着ることへの誇りを育てる

制服は、この三つのいずれか一つに属するものではありません。三つすべてに同時にまたがる、数少ない経営資源の一つです。そして多くの企業にとって、それはすでに手元にあるものでもあります。新たにゼロから何かを生み出さなくても、見直すだけで効果を得られる余地が残されている——制服とは、そういう資産です。

まとめ

  • 制服には「作業服としての機能性」と「見た目」の二つの機能があり、後者は前者と同等か、それ以上に重要である
  • 制服を着る業務は消費者から正面・至近距離の視線を勤務時間中ずっと浴び続けるため、見た目が従業員心理に与える影響は私服の比ではない
  • 選べない服を着てもらっている以上、その服が誇れるものかどうかは会社が引き受けるべき責任である
  • 見た目の良い制服は「従業員個人の内面 → 業務・接客の質 → 企業のブランド価値」という三段階の連鎖を生み、その起点は常に従業員の承認欲求にある
  • 制服は最も身近な職場環境であり、大きな投資を伴わず、更新のタイミングも定期的に訪れる手をつけやすい経営資源である
  • 選ぶ基準は、従業員目線と消費者目線の双方で「かっこいい」「かわいい」と思えること。有名デザイナーも特別な感性も必要ない
  • 奇抜さを狙いすぎず、選定プロセスに従業員自身を巻き込むことが、着ることへの誇りをさらに強くする

ET-OFFICE 経営労務デザインでは、制服をはじめとする職場環境の見直しから、従業員エンゲージメントの向上、ブランド戦略・採用ブランディングまで、三本柱の視点でトータルにご支援しています。「制服の刷新を検討したい」「現場の声をどう反映すればよいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

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