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※このコラムの内容は、私の個人的な考えであり、裏付けとなるエビデンスは一切ありません。その前提でお読みください。

「自社の製品を、何色にするか」。プロダクトの企画・開発に携わる方なら、一度は頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。色は、形やデザインと並んで、製品の第一印象を大きく左右する要素です。どれほど優れた機能と美しい形を持つ製品であっても、色の選択を誤れば、その良さは伝わりにくくなります。いま、プロダクトの色で悩んでいるのであれば、私がお勧めするのは緑系の色です。緑にもいろいろありますが、少し青みがかった、くすんだ緑です。つまり、緑色をベースに、青を少しとグレーを少し加えた色です。なぜこの色がお勧めなのか。理由は三つあります。一つ目は時代背景、二つ目はトレンド、三つ目は消費者への訴求です。今回は、この三つの視点で考えてみます。

視点何が起きているか色への示唆
① 時代背景AIが暮らしと仕事に入り込み、人は無意識のうちにAIへの対抗軸を求めている人間だけが安らぎを覚える色=緑
② トレンド色の流行は順番に巡る。いまは緑系の番が来ているプロダクトの分野では、まだしばらく続く
③ 消費者への訴求「馴染みと安心感」と「新鮮味」の両立、そして住環境との調和が求められる青を少し(新鮮味)+グレーを少し(調和)

一つ目の理由 — 緑に安らぎを覚えるのは、人間だけである

私はこれまでのコラムで、「現代人の行動は、潜在的にAIに対する対抗軸を意識して決められている」という考えを述べてきました。流行色についても、この文脈で説明できます。

緑色は、人間にとって最も身近な色です。家から一歩外に出ると、すぐに植物の緑が目に入ります。緑は大地を象徴する色であり、安心感を覚える色です。おそらく、人間に限らず、陸上で生きるすべての生き物にとって、緑は最も身近で安心できる色でしょう。

一方、AIにそのような感覚はありません。試しに、いくつかのAIに「インターネット空間の中で最も多い色は何か」と尋ねたところ、答えは「青」でした。つまり、AIにとって最も身近な色は「青」だと思われます(ただし、AIには「身近に感じる」という感覚そのものがないため、「身近な色は何?」と聞いても答えはありませんでした)。また、「AIを色に例えると何色ですか?」と尋ねたところ、こちらも「青」とのことでした。

青は、海や空など、人間にも馴染みのある色です。しかし、AIを連想させることで、今の時代においては、人間に安らぎよりも緊張感を与える可能性があります。緑に安らぎを覚えるのは、AIには無い、人間だけの特性です。AIが急速に身の回りに入り込んできた今だからこそ、人は意識しないまま、人間らしさを感じられる色に手を伸ばしているのではないでしょうか。

誤解のないように申し上げると、青そのものが悪い色だということではありません。お伝えしたいのは、同じ青でも、時代の文脈によって、人が受け取る印象は変わるということです。色の意味は、色そのものだけで決まるのではなく、その時代の人々が、その色から何を連想するかによっても決まります。

二つ目の理由 — 色の流行は、順番に巡る

緑系の色は、長い間、日陰の存在でした。以前、同じように長い間、隅に追いやられていた紫色が復活したように、色の流行は順番に巡ります。そして順番から見て、現在は緑系の色の番が来ています。

ファッションの世界では、緑系が復活してから既に数年が経過しており、次の順番の兆しも表れ始めています。それなら緑はもう遅いのか、というと、そうではありません。以前のコラム「流行色を『仕組み』として理解する」でも書きましたが、色の浸透には、分野ごとにタイムラグがあります。流行色はまずアパレルに現れ、雑貨やインテリアを経て、時間をかけてプロダクトへと広がっていきます。プロダクトに関しては、緑系の流れはまだしばらく続くと見てよいでしょう。

プロダクトは、企画から発売までに時間がかかります。いま企画を始める製品が店頭に並ぶ頃にも、プロダクトの分野では、緑系の流れが続いていると考えられます。逆に言えば、ファッションで次の色の兆しが見え始めたからといって、プロダクトの色をすぐに切り替える必要はありません。

では、いつまで続くのか。一つ目の理由と重ね合わせると、その見通しも立ちます。AIとの共存の方法が確立して社会が安定し、AIに対する警戒感が無くなるまで。それまでは、この傾向は続くでしょう。

三つ目の理由 — 「青を少し」は新鮮味のため、「グレーを少し」は調和のため

緑色にもいろいろありますが、少し青を加えるのは、新鮮味を出すためです。ただの緑や、黄色がかった緑は、自然界にあふれている色です。安心感はありますが、新鮮味がありません。見慣れた緑に、ほんの少し青を加えるだけで、自然の中ではあまり見かけない、少し洗練された印象が生まれます。消費者の購買意欲を喚起するためには、「馴染みがあり、安心感はあるが、どこか新鮮な感じがする」という感覚が大事です。

また、少しグレーを加える理由は、インテリアとの調和です。鮮やかな色は、住環境と調和しません。鮮やかな色はアクセントとして効果的ですが、そのためには、優れたデザインを持っていること、高額商品であること、といった条件が必要です。つまり、所有欲を満たす製品でなければなりません。普及品クラスのプロダクトでアクセントカラーを採用することには、非常に大きなリスクがあります。

グレーを加えることでトーンが落ち、住環境に調和しやすい色になります。青とグレーを少しずつ加えることで、新鮮でありながら、住環境とも調和する色になるのです。以前のコラムでも述べたとおり、製品は機能を発揮している時間よりも、そこに置かれている時間のほうがはるかに長いものです。その間ずっと、製品の色は暮らしの空間に作用し続けます。色は、価格ではなく価値で選ばれる製品をつくるための、最も身近な手段の一つです。当事務所が掲げる「3つの戦略」でいえば、色の選択は、デザイン戦略とブランド戦略が重なり合う場所にあります。

白は、特別な色である

ところで、白色は特別な色です。プロダクトにおいて、白は常に正解です。キッチン、リビング、寝室と、あらゆるインテリアと調和します。そして、流行にも左右されません。従って、白の採用を迷う必要はありません。ここまでお話ししてきたことは、白以外の色を検討する場合のことです。

まとめると、私がお勧めするのは、次の5色です。①白、②薄いくすんだ青緑、③やや薄目のくすんだ青緑、④くすんだ青緑、⑤少し濃い目のくすんだ青緑。色の見本は、この記事の最後に載せています。

②~⑤は、同じ色の濃淡です。製品のシリーズで色違いを展開する場合や、一つの製品の中で部位ごとに色を使い分ける場合にも、並べたときの統一感を保ちやすくなります。白と組み合わせれば、なおさらです。

まとめ

  • いま、プロダクトの色に迷ったら、少し青みがかったくすんだ緑(緑をベースに、青を少しとグレーを少し加えた色)がお勧め
  • 一つ目の理由は時代背景。緑は人間にとって最も身近で、安心できる色。AIを連想させる「青」に対し、緑に安らぎを覚えるのはAIには無い人間だけの特性
  • 二つ目の理由はトレンド。色の流行は順番に巡り、いまは緑系の番。ファッションでは次の兆しもあるが、分野ごとのタイムラグがあり、プロダクトではまだしばらく続く
  • 三つ目の理由は消費者への訴求。青を少し加えて新鮮味を、グレーを少し加えて住環境との調和を生む
  • 普及品クラスのプロダクトで、鮮やかなアクセントカラーを採用することはリスクが大きい
  • 白は特別な色であり、プロダクトにおいては常に正解。白以外の色を選ぶときの答えが、くすんだ青緑

お勧めの5色(色の見本)

②~⑤は、色み(色相)とくすみ具合(彩度)をそろえ、色の濃淡だけを変えています。

番号色見本参考(カラーコード)
①白
#FFFFFF
②薄いくすんだ青緑
#DBE8E7
③やや薄目のくすんだ青緑
#BED2D1
④くすんだ青緑
#9CB0AF
⑤少し濃い目のくすんだ青緑
#7E9190

※画面に表示される色は、お使いの機器や設定によって見え方が異なります。実際の製品の色を決める際は、色見本帳や試作品でご確認ください。


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