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「えるぼし認定を取得すれば採用に有利になる」——そう聞いて、認定取得を目標に動き始める企業は少なくありません。しかし、認定を取ることそのものを目的にすると、制度の整備は表面的なものにとどまり、肝心の採用力も組織力も変わらないまま、という結果になりがちです。

えるぼし認定が採用市場で評価されるのは、認定マークそのものに価値があるからではありません。その背景にある「社員が安心して長く働ける環境」が価値の源泉です。そして、その環境は女性だけに向けて整えるものではなく、男性を含むすべての社員に提供されるべきものです。

この記事では、えるぼし認定の制度概要を押さえながら、認定取得を「手段」として活用し、就労環境の整備 → 社員のモチベーション・エンゲージメントの向上 → 人的パフォーマンスの向上 → 採用力の強化という好循環をどう設計するかをお伝えします。

えるぼし認定とは — 制度の概要と5つの基準

えるぼし認定は、「女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」に基づき、女性活躍推進の取り組みが優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。2016年に創設され、現在は段階的な認定(1段階〜3段階)と、より高い水準を示す「プラチナえるぼし」の4段階で構成されています。

認定の段階は、以下の5つの評価項目のうち、基準を満たした項目数によって決まります。

評価項目主な確認内容
① 採用女性の採用比率が一定水準以上、または男女の採用競争倍率が同程度
② 継続就業女性の継続就業率が高い、または育児休業取得率・職場復帰率が一定以上
③ 労働時間等の働き方男女ともに所定外労働時間が一定水準以下
④ 管理職比率女性管理職比率が業種平均以上、または一定の割合以上
⑤ 多様なキャリアコース非正規から正規転換、再雇用制度の整備など多様な働き方の実績

認定を受けた企業は、求人票・採用ページ・商品・名刺などにえるぼしマークを使用できます。厚生労働省の運営する「女性の活躍推進企業データベース」にも掲載され、求職者が企業を選ぶ際の参照情報になります。

なお、常時雇用する労働者が101人以上の企業には、一般事業主行動計画の策定・届出と女性活躍状況の情報公表が義務づけられています(100人以下は努力義務)。えるぼし認定はその延長線上に位置づけられる任意の認定制度です。

認定を「目的」にすると失敗する理由

えるぼし認定の取得を目指す企業が陥りやすいのは、「基準をクリアするための数字づくり」に走ってしまうことです。女性管理職の割合を形式的に上げる、育児休業の取得率を書類上整える、残業を一時的に抑制する——これらが実態を伴わない数字合わせになったとき、社員は敏感に察します。

対処療法ではなく根本から解決するという視点で考えてみます。えるぼし認定の評価項目は、そのまま「社員が長く安心して働ける職場かどうか」の指標でもあります。継続就業率が高い、管理職に女性が登用されている、残業が少ない——これらは、認定のために作り出す数字ではなく、職場の実態を変えた結果として自然についてくる数字であるべきです。

また、就労環境の整備を「女性のための施策」として設計すると、もう一つの落とし穴に入ります。育児休業を女性だけが取りやすい文化、時短勤務を女性だけが使う制度——こうした設計では、女性社員の定着率は上がるかもしれませんが、男性社員のエンゲージメントは置き去りになります。職場全体としての生産性と採用競争力を高めるには、すべての社員に対して公平な就労環境を整えることが前提です。えるぼし認定はその過程で取得するもの、という視点が重要です。

就労環境の整備が全社員のエンゲージメントを高める

「社員のモチベーションとエンゲージメントを高める」というと、評価制度や報酬設計の話に向かいがちです。しかし、エンゲージメントの土台となるのは、「この会社は自分を大切にしてくれている」という実感です。就労環境の整備は、まさにその実感をつくる取り組みです。

えるぼし認定の評価項目に対応した就労環境整備を、男女を問わず全社員向けに展開したとき、何が変わるかを整理します。

就労環境の整備全社員への効果人的パフォーマンスへの影響
残業削減・労働時間の適正化心身の余裕が生まれ、集中力と創造性が高まる生産性の向上・ミス・離職の減少
育児・介護休業の取得しやすい文化ライフイベントを経ても働き続けられる安心感優秀な人材の定着・経験の蓄積
多様なキャリアコースの整備自分の将来像を描けるようになる長期的なモチベーションの維持
管理職への登用機会の公平化努力が報われる可能性を実感できる組織全体の成長意欲の向上

制度を作って終わりではなく、運用の中でこれらが機能しているかを定期的に確認することが重要です。就業規則や関連規程に制度を明記するだけでなく、管理職が制度を正しく理解して運用できているか、相談窓口が機能しているか、利用実績を振り返ってボトルネックを解消できているか——このサイクルを回す仕組みを持つ企業ほど、社員のエンゲージメントが実質的に高まります。

エンゲージメントが高まった組織では、離職率が下がり、採用コストが削減されます。また、社員一人ひとりのパフォーマンスが向上することで、売上・品質・顧客満足度といった業績指標に好影響が出てきます。守りの人事から攻めの人事へ——就労環境の整備は、コストではなく投資です。

採用ブランディングとしての対外発信

就労環境が実態として整ったとき、次のステップが「それを外に伝える」ことです。価格ではなく価値で選ばれるという視点で考えてみます。採用市場においても、「給与が高い」という理由で集まる求職者よりも、「この会社の価値観と環境が自分に合う」という理由で応募する人材の方が、長期定着・活躍の可能性が高くなります。

えるぼし認定マークは、その「価値を伝えるツール」の一つです。求人票・採用ページ・会社案内にえるぼしマークを掲載することで、「女性が働きやすい」という情報だけでなく、「残業が少ない」「育休が取れる」「キャリアを続けられる」という環境の実態を、求職者に対して無言で伝えることができます。

しかし発信はマークの掲載だけに留まりません。採用ページに「当社の働き方」として具体的な数字(平均残業時間・育休取得率・女性管理職比率など)を掲載する、社員インタビューでライフイベントを経ながら働き続けるリアルなストーリーを紹介する——こうした情報が積み重なることで、求職者の信頼感は高まります。

また、えるぼし認定の取り組みは、既存の顧客や取引先に対しても「この会社は社員を大切にしている」というメッセージを届けます。ブランドは採用市場だけで作られるものではなく、顧客・取引先・地域社会との信頼関係全体で形成されていきます。就労環境の整備とその発信は、企業のブランド資産を中長期で積み上げる取り組みでもあるのです。

まとめ

  • えるぼし認定は「取得すること」が目的ではなく、就労環境を整えた結果として取得するもの
  • 整備する環境は女性だけでなく、すべての社員に公平に提供することで組織全体のエンゲージメントが高まる
  • エンゲージメントの向上は離職率の低下・生産性の向上を通じて、業績向上に直結する
  • 実態を伴う就労環境の整備が、えるぼしマークや採用ページの情報発信に信頼性を与える
  • 採用ブランディングは「選んでもらうための情報発信」である前に、「選ばれる実態をつくること」が先決

「えるぼし認定を取ったのに採用がうまくいかない」という声を聞くとき、その多くは認定と実態が乖離しているケースです。就労環境の整備を、制度の整合・管理職の意識・評価制度・対外発信まで一体として設計することが、採用力と組織力の両方を底上げする経営労務デザインの本質です。


ET-OFFICE 経営労務デザインでは、えるぼし認定に向けた行動計画の策定から、就業規則・評価制度の整備、採用ブランディングの設計まで、社会保険労務士・中小企業診断士の両面からご支援しています。初回相談は無料です。

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