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知人が「推し活」に熱心だと聞いて、少し興味が湧き、調べてみました。すると、推し活をする人が増え、その市場規模も拡大していることが分かりました。なぜ、推し活はこれほど広がっているのでしょうか。そして、この傾向は、消費の動向に何らかの影響を与えうるのでしょうか。今回から3回に分けて、(上)推し活が拡大している背景、(中)推し活とは何か、なぜ生まれたのか、(下)推し活が示唆する企業経営のヒント、という順に考えてみます。なお、私自身には推し活の経験がありません。ここでお話しするのは、あくまで想像の範囲での考えであることを、あらかじめお断りしておきます。

推し活人口は約1,940万人、1年で約4割の増加

推し活総研が2026年1月に実施した「第3回 推し活実態アンケート調査」によると、推し活をしている人の数は、人口に換算して約1,940万人でした。前回(2025年1月)の約1,384万人から約556万人増えており、増加率は約40.2%にのぼります。また、推し活の市場規模は約4.1兆円と推計されています(前年比約17.1%増)。

項目内容
調査推し活総研「第3回 推し活実態アンケート調査」(2026年1月)
対象15〜69歳の日本在住者 23,125人
推し活人口約1,940万人(前回の約1,384万人から約40.2%増)
市場規模約4.1兆円

この約1,940万人という数は、カラオケ人口やジョギング・マラソン人口よりも多く、遊園地・テーマパーク人口とほぼ同じ規模です。ゴルフや登山と比べると、約4倍にあたります。推し活は、もはや一部の熱心な人たちだけのものではなく、国民的な余暇活動の一つと言ってよい規模になっています。

最大の要因は、「推し」という言葉の誕生と普及

では、なぜ推し活人口がこれほど増えたのでしょうか。私は、一番の要因は、「推し」という言葉が生まれ、広く普及したことにあると考えています。言葉が普及したことで、「推し」という概念そのものが、一般に広く認識されるようになりました。

言葉には、それまで漠然としていたものに輪郭を与える力があります。名前が付くことで、人はそれを認識し、語り合い、共有できるようになります。「推し」という言葉が生まれる前にも、誰かや何かを熱心に応援する人は大勢いました。しかし、その行動をひとまとめに言い表す、軽やかで使いやすい言葉はなかったのです。

その結果、「推し」という概念がカバーする範囲が大きく広がり、従来からあった、ほとんどすべての「推し的」な行動を網羅するようになりました。ファン、おっかけ、オタク、ひいきなど、かつてはそれぞれ別の言葉で呼ばれていた行動は、現在では、すべて「推し」の傘の下に入っています。

そのため、ひと口に「推し」と言っても、その中には、非常に軽く浅い推しから、極めて重く深い推しまで、幅広い程度のものが含まれています。好きなアイドルの曲をときどき聴く人も、遠征してまでライブに通い続ける人も、どちらも同じ「推し活」をしている人として数えられるのです。言葉の傘が大きくなれば、その下に入る人の数が増えるのは、ある意味で自然なことです。

自分の行動を「推し」として捉え直した人たち

もう一つ見逃せないのは、「推し」という言葉と概念が一般化したことで、それまで自分の行動を「推し」として自覚していなかった人たちが、自分の行動を「推し」として捉え直したことです。たとえば、昔から特定の選手やチームを応援してきた人、好きな作家の新刊を欠かさず買ってきた人が、ある日「これは推し活だったのか」と気づく。そうした「再定義」が起きたことで、推し活人口は急速に拡大したのだと思われます。

つまり、推し活人口の増加には、新たに推し活を始めた人だけでなく、もともとしていた行動に「推し活」という名前が付いた人も含まれていると考えられます。数字を読むときには、この点を頭に置いておくとよいでしょう。市場規模についても同じで、以前から使われていたお金の一部が、新たに「推し活」の支出として数えられるようになった面もあるはずです。

また、「推し」という言葉が一般化したことで、推し活に対する心理的なハードルが下がり、実際に参加する人が増えたことも考えられます。誰かを応援することを、気軽に「推し」と口にできる。その明るさと軽やかさが、新たな参加者を呼び込んでいるのではないでしょうか。

企業が「市場」として認識し、積極的に動き出した

さらに、企業の側が、推し活を一つの市場として認識し、積極的に対応し始めたことも、拡大の要因でしょう。推し活をテーマにした展示会が毎年開催されるようになっていることは、その表れの一つです。推し活をする人を顧客として正面から捉え、商品やサービスを用意する企業が増えれば、推し活はさらに身近になり、参加する人も増えていきます。推し活は、企業にとっても見過ごせない市場になりつつあるのです。言葉の普及、自覚の広がり、企業の参入が、互いに後押しし合う循環が生まれているように見えます。

一過性のブームでは終わらない、と考える理由

ここまで見てくると、推し活の拡大は、言葉の流行に乗った一過性のブームのようにも見えるかもしれません。しかし私は、そうではないと考えています。言葉は、何もないところからは広まりません。「推し」という言葉がこれほど多くの人に受け入れられたのは、その言葉で言い表したい何かが、人々の中に確かにあったからです。その「何か」とは何だったのか。それを考えることが、推し活の本質に近づく手がかりになります。

しかし、ここで一つの疑問が残ります。なぜ、「推し」という新しい言葉が生まれ、従来からあったファン的な行動のすべてを「推し」として再定義する必要があったのでしょうか。次回(中)では、この疑問を手がかりに、推し活とは何か、なぜ生まれたのかを考えてみます。

まとめ

  • 推し活総研の2026年1月の調査では、推し活人口は約1,940万人(前回から約40.2%増)、市場規模は約4.1兆円
  • 推し活人口が増えた一番の要因は、「推し」という言葉が生まれ、普及したこと
  • ファン、おっかけ、オタク、ひいきなどが、すべて「推し」の傘の下に入り、軽く浅い推しから重く深い推しまでが含まれるようになった
  • 自分の行動を「推し」として捉え直す人が増えたことや、心理的なハードルが下がったことも、人口の拡大につながった
  • 企業が推し活を市場として認識し、積極的に対応し始めたことも、拡大を後押ししている

出典:推し活総研「第3回 推し活実態アンケート調査」(2026年1月)


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